万引きの相殺
当たり付きのアイスってありますよね。
こういうやつです。
この当たりを“確実に引ける能力”があったら、素敵ですよね。
もしそんな能力があったらやってみたいことがあるのです。
夏の足音が聞こえる最近の気候。夏といえばアイス、アイスといえば万引きですよね。
しかし、残念ながら万引きは犯罪です。
決して許される行為ではありません。
でも、 ”アイスの当たりを確実に引ける能力”があったらどうでしょう?
例えば、この能力を持ったあなたが、万引きするとしましょう。
暑くなってきましたから、万引くなら、やはりアイスです。
しかし、店員さんに捕まってしまいます。こういうこともあるでしょう。
そして、店員さんとともに事務所に向かうことになります。
このとき、万引いたアイスも一緒に持っていくものと推測されます。なぜなら、そのアイスは万引きの重要な証拠であり、アイスケースに戻す事は考えにくいからです。
事務所では厳しい説教が展開されることでしょう。
正論のナイフが心を刺します。
そんなとき、ふと目に入るのは、先ほど万引きしたアイスです。
常温では確実に溶けていきます。パッケージには無数の水滴がつき、やがてアイスとしての形が崩れてきます。
製菓会社の方々が丹精込めて作ったアイスが、誰の口にも運ばれぬまま、液体に帰す。そんなことがあって良いのでしょうか。窃盗に加えて、製菓会社の方々の気持ちを踏みにじるという罪を重ねても良いのでしょうか。
そうなれば、取るべき行動は一つです。
アイスを、食べるのです。
袋を開け、アイスを口に運ぶのです。溶けかかったアイスは、口内にすぐに消えゆくことでしょう。尋問を担当していた店員さんはすぐさま制止にかかります。
そのとき、口から抜かれたアイスの棒には何と書かれていますか?
思い出してください、あなたの能力を。
“当たり”です。
確実に当たりを引けるのです。
つまり“代金を払わず、アイスを一本もらえる権利”がこの瞬間得られるわけです。
ここで、あなたの罪を思い返してみてください。
“代金を払わず、アイスを一本もらったこと”です。
ここに万引きの相殺が成立します。
つまり、“代金を払わず、アイスを一本もらえる権利”をもって、“代金を払わず、アイスを一本もらったこと”を相殺できるのです。
あなたは当たり棒を持っていますから、アイスをタダでもらう正当な権利者です。もらうのが少し早かっただけのことなのです。
正しいのはあなたです。
これで“勝ち”です。
たとえその後、前科が増えようと、実刑を受けようと、このロジックによってあなたの“勝ち”は揺るがないのです。
もしこの能力を持っている方がいれば、“勝って”みてはいかがでしょうか。
それでは。