暮らし

バーミヤンを弄んだ

ミルクボーイ「メンヘラ」

「いきなりですけどね。うちのオカンが、学生時代の親友がおるらしいんやけど」

 

「あっそうなんやー」

 

「それがどんな人やったかをちょっと忘れたらしくてね」

 

「親友の性格忘れてもうて。どうなってんねんそれ」

 

「でまあ色々聞くんやけど、全然分からへんねんな」

 

「分からへんの?ほな俺がね、オカンの親友の性格、ちょっと一緒に考えてあげるから。その親友の特徴を教えてみてよ」

 

「オカンが言うには、自己評価が低いのに承認欲求だけは強くて、周りに迷惑をかけてるらしいねんな」

 

「おー、メンヘラやないか!その特徴は完全にメンヘラやん、すぐわかったやんかこんなん」

 

「わからへんねんな」

 

「何がわからへんの」

 

「俺もメンヘラと思ってんけどな、オカンが言うには、集合写真の時、前に寝そべってたらしいねんな」

 

「あ〜、ほなメンヘラと違うか〜、メンヘラは集合写真で目立とうとせえへんからね。そもそもメンヘラは集合写真の日休むのよ!メンヘラと違うやんそうなったら〜ほなもう一度詳しく教えてくれる〜?」

 

「オカンが言うには、親に対しては異常に当たりが強いらしいねん」

 

「メンヘラやないか!メンヘラはね、たいてい親と不仲なのよ。それどころか、この世の全ての災いは親のせいで起こると信じてるんやから!メンヘラで決まりやん!」

 

「わからへんねんな」

 

「何がわかれへんのよ」

 

「俺もメンヘラと思ってんけどな、オカンが言うには、夏生まれらしいねんな」

 

「ほなメンヘラと違うか〜、メンヘラが夏に生まれるわけないもんね。メンヘラはね、秋から冬にかけて生まれるのよ。メンヘラってそういうもんやから!メンヘラと違うやん!ほなもっと他に何か言うてなかった〜?」

 

「ピンクと紫の入り混じった服を着てるらしいねん」

 

「メンヘラやないか!メンヘラはね、ねるねるねるねみたいな色合いを好むのよ!「ゆめかわはメンヘラの始まり」なんやから。メンヘラで決まりやん!」

 

「でもわからへんねんな」

 

「何がわからへんのこれで」

 

「俺もメンヘラと思ってんけどな、オカンが言うには、ふきのとうが好物らしいねん」

 

「ほなメンヘラと違うか〜、メンヘラに春の味覚わからへんもんね。そもそもメンヘラは日本食に興味を示さへんのよ。メンヘラと違うやんそうなったら〜ほなもっと他に何か言うてなかった〜?」

 

「オカンが言うには、リストカットするらしいねん」

 

リストカット?ほなメンヘラやんか〜リストカットなんてメンヘラの象徴やからね」

 

「手刀でするんやけどな」

 

「ほなメンヘラと違うやないか!メンヘラはね、道具なしでは、自分の体を傷つけることすら満足にできひんのよ。悲しいけどメンヘラってそういうもんやから。メンヘラと違うやん!なんで絶対メンヘラやのにメンヘラと違うの〜?もっと他に言うてなかった〜?」

 

「オカンが言うには、意味深な短文ツイートを連投するらしいねんな」

 

「メンヘラやないか!あれは一体何がしたいんや!一つにまとめればいいのに、連続でツイートするからタイムラインが埋め尽くされて、結局ミュートすることになるんやから!メンヘラで決まりやん!」

 

「わからへんねん」

 

「何がわからへんねん!」

 

「俺もそう思ったんやけどな、オカンが言うには、男性らしいねんな」

 

「ほなメンヘラと違うやないか!男のメンヘラなんておるはずがないのよ!仮に居たとしてもね、男のメンヘラは社会的に存在が許容されてないから、統計には表れてこないのよ!メンヘラと違うやん!ほなもっと他に言うてなかった〜?」


「虚言癖があるらしいねん」

 

「メンヘラやないか!メンヘラは嘘で自分を飾り立てないと生きていかれへんのやから!メンヘラにとって嘘はアクセサリーなのよ!首元に輝く嘘という宝石が、いずれ真綿となって自分の首を絞めるとも知らずに嘘を重ね続けるんやから。メンヘラで決まりやんもう!」

 

「わからへんねんな」

 

「わからへんことない。オカンの親友はメンヘラや」

 

「俺もそう思ったんやけどな、オカンが言うには、俺やオカンはそういう性格には絶対ならへんって言うねんな」

 

「ほなメンヘラと違うやないか!誰でも外部的な要因によってメンヘラになりうるんやから!メンヘラを対岸の火事と思って馬鹿にしてると、自分自身が精神を病んだ時、過去の言葉が自分に返ってくるのよ。メンヘラってそういうもんやから!ほんまにわからへんやん!どうなってんのよ〜!」

 

「オトンが言うには」

 

「オトン!」


ツンデレちゃうかって言うねんな」


「いやツンデレ手刀で手首切らんやろ。もうええわ、どうもありがとうございました〜」

バズったら宣伝しろっておばあちゃんが言ってたので

私は俗に言うおばあちゃん子だ。

祖母の家は私の住む街から駅にして三つ離れたところにあった。祖父は私が生まれる前に他界しており、老人の一人暮らしにはやや広すぎる日本家屋に、祖母は一人で住んでいた。

正月に、夏休みに、あるいは両親と喧嘩をしたときに、祖母の家を訪れた。そのたびに、祖母は私を優しく迎え入れてくれたのであった。

 

祖母が入院したのは私が高校二年のときだった。

病気のことを詳しく聞いたわけではない。しかし、両親の様子を見る限り、病状が思わしくないことは、なんとなくわかっていた。

私は祖母の入院先に足繁く通った。その病院もやはり私の街からは三駅離れたところにあった。

病室でも、祖母は普段と変わらず、私を優しく迎え入れてくれた。

学校のこと、通い始めた予備校のこと、最近買ってもらったスマートフォンのこと。他愛もない話を、祖母は嬉しそうに聴いてくれた。そのことが、私にとっても嬉しかった。

その日も私は、学校帰り、自分の最寄り駅を三つ通り過ぎて、祖母の入院先へ向かった。

祖母の様子は普段と変わらなかった。他愛もない話を優しい笑顔で聴いてくれた。

帰り際、祖母は私を呼び止めた。そんなことは初めてだった。祖母は蕩々と話し始めた。

「ゆうちゃん、わかっていると思うけど、私はもう長く生きられないの。優しい家族に恵まれて、未練はないけれど、可愛い孫に会えなくなるのは寂しいわ。だから、このお守りを私だと思って持っていてほしい」

そう言って赤いお守り袋を私の手のひらに置いた。

「それからもう一つお願い。私は、ツイッターというものはよくわからないけれど、前に聞いた話では、いいと思った物事を共有するものなのね?だから、沢山の人に"いいね"って言われるような投稿をしてほしい。そして、そういう投稿ができたら、その人達にゆうちゃんの好きなものを教えてあげてほしい。ゆうちゃんは私の自慢の孫だから、沢山の人に好かれてほしいし、ゆうちゃんを好いてくれる人たちと、好きなものを共有してほしい。それが、私の願い」

「わかった、必ずバズって、そのあと宣伝する」と私は応えた。祖母は私の言った「バズる」の意味を明らかには飲み込めていないようだったが、私が祖母の願う通りにすると約束したことに満足そうだった。

「もしそれができたら、そのお守りを開いてみて。そのときのゆうちゃんに必要なことが書かれているから」

私は頷いた。

話している間、祖母は柔和な表情を崩さなかった。しかし、その奥にある真剣な眼差しを、私は感じ取っていた。

帰りの電車内で、祖母にもらったお守りを見つめた。涙が止まらなかった。

祖母が亡くなったのは、それからちょうど一週間後のことだった。

 

それからというもの、私はただ、バズることだけを、祖母との約束を履行することだけを考えて生活をした。

まず、バズの素地を作ることが必要だと思った。相互フォローアカウントを利用し、ある程度見栄えのよいFF比*1を作った。その上でFF比が近いアカウントをフォローし、まめに"いいね"をすることで、着実にフォロワーを増やした。もちろんその間にも、まとめサイトや他のツイッターアカウントから面白い画像や文章を剽窃し、時期を見てツイートすることを心がけた。

フォロワーを増やすこと、面白いツイートを用意すること。この二つのことに私は心血を注いだ。これがバズのための最短ルートだと信じていた。このルートを進むことだけが生活の全てだった。

気がつくと祖母の死から二年が経っていた。最もいいねがついたツイートで71いいね。何いいねからがバズであるかという基準は、はっきりとわかっていなかったが、自分のツイートがまだその域に達していないことは理解していた。

祖母との約束に期限はない。しかし、このままでは一生約束を果たせないのではないかという焦りを、確かに感じるようになっていた。

そんな漠然とした焦燥感に包まれながら、まとめサイトの書き込みをコピーアンドペーストしている最中、一つの考えが浮かんだ。

伸びているツイートにリプライを送るのはどうか――。

それまで、私はフォロワーを増やす努力をしてきた。ツイートを見る人が多ければ多いほど、バズる確率も高くなると考えたからだ。

何万、何十万という"いいね"がついているツイートは、それだけ多くの人の目に触れているということだ。そのリプライ欄にも同じことがいえる。伸びたツイートにリプライを送れば、普通にツイートするよりも人目につきやすく、バズるハードルはぐっと低くなる。

私はリプライの宛先となるツイートを探した。それはすぐに見つかった。

投稿から5時間で1.2万いいね。投稿からまだ間もないにも関わらずこれだけ伸びているなら、ここから先もさらに多くの人の耳目を集めるだろう。その過程で私がこれから送るリプライにも多くの"いいね"がつくに違いない!

ふとツイートの内容を見た。モナ・リザ松本人志の顔面が合成された画像だ。本文はない。

これはパクツイだ! 

以前にまとめサイトで、また他の人のツイートでも見たことがある画像だった。私もまとめサイトや他のツイッターアカウントから面白い画像や文章を剽窃してツイートをしている手前、インターネット上のネタには詳しくなっていた。これは明らかに既出だ。

パクツイが非難される理由を私は知らなかった。しかし、それを指摘した者が賞賛されるということは知っていた。

幸いにも、当該ツイートにはまだパクツイを指摘するリプライは送られていない。

ならば――!

私は、ピンク色のベストを着た芸人がアニメキャラクターと一緒に上方を指さし、下部には「上のツイートパクツイな」という文字が入った画像をリプライとして送信した。満を持してのパクツイ指摘だ。

成果はすぐに現れた。

通知が鳴り止まない。私のリプライへの"いいね"は一時間あまりで700を越えた。 

これが"バズ"。私が追い求めていたもの。

私は"バズった"リプライに更に続けた。

「バズったら宣伝しろっておばあちゃんが言ってたので!私の大好きなおばあちゃんです!」

宣伝ツイートには祖母の生前の姿と遺骨の写真を添付した。

私の心は意外なほど落ち着いていた。その穏やかさは、達成感から来るものに違いなかった。

バズり、そして宣伝すること。私は、遂に祖母との約束を果たしたのだ。

いや、祖母の願いはもう一つあった。祖母が「自分の代わりに」と渡してくれたお守り。約束を果たした暁にはそれを開けてほしいということだったはずだ。

私は机の引き出しからお守りを出し、手のひらに乗せた。

約束を果たした孫の姿を、誇らしい仕事を完遂した私の姿を、祖母に見せなければならない。

お守りを開けた。中には、小さな紙が四つ折りにされて入っていた。

紙を開くと「死ね」と書かれていた。

*1:フォロー数とフォロワー数の比率のこと。一般に、後者が前者を上回っている方が良いとされる。

落語「恵」

熊さん「こんちわー、ご隠居いますかーい」

 

ご隠居「はいはい、おや、誰かと思ったら熊さんじゃないか。まぁお上がりお上がり」

 

熊「どうも、ご隠居。今日はね、ちょいとお願いがあって来やして」

 

隠「ほう、 お前さんがアタシに頼みなんて珍しいね。なんだい?」

 

 ご隠居が聞きますと、熊さんが珍しく神妙な顔で言います。

 

熊「他じゃねぇんですがね、アッシんところに子供が生まれまして」

 

隠「おや! オメデタ」

 

熊「それでカカァと話をしてたんです、名前を付けなきゃいけないってんでね」

 

隠「そうだな。子どもには名前を付けるもんだ」

 

熊「そんでカカァが、お前さん付けとくれってんですが、アッシは学がねぇ。だからね、ウチのガキの名前付けちゃくれやせんか、頼みますよご隠居」

 

隠「そうかい、じゃぁ喜んで付けさせて貰いましょ。でも何かい、名前を付けるってことぁ、アタシが赤ちゃんの名付け親になるって事だよ。構わないのかい?」

 

 もちろんと頷く熊さんに、

 

隠「うん。お前さんも人の親になったんだ。こういう風に育ってもらいたい、こういう風に成って欲しいなんて願いもあるだろう。どういう名前がいいかな」

 

 すると熊さん、ご隠居に顔を近づけると、

 

熊「長生きするような、めでてぇ名前なら何でもいいんだ。

 いやね、生まれる前ぇは、こうなって欲しいああなって欲しいなんて思いもしましたが、顔見ちまうとどうでもよくなっちまって。へへ、親ってのは妙なモンだね。とにかくまぁ、長生きしてくれりゃぁいいと思ってね。何か縁起のいい名前をお願いしやすよ」

 

 と言います。それを聞いたご隠居は少し感心したように、

 

隠「ほう、縁起のいい名前な。それじゃぁどうだろうな。

これはアタシも聞いた話で実際に見して貰ったことがあるわけじゃぁないんだけどね、TBSのお昼に出てくる芸人で、『恵俊彰(めぐみとしあき)』というのがある。どうだい?」

 

熊「『ひるおび!』ですかい?そりゃめでてぇね。毎日ずっと恵なんて結構ですね。他にも何かありますかね?」

 

と熊さん目を輝かせる。

 

隠「うん『海砂利水魚の4年先輩』ってのもあるな」

 

熊「え、めでてぇのかいそれ、海砂利?」

 

隠「海砂利水魚ってのは今で言うくりぃむしちゅーさんだな。芸歴でいうと恵はくりぃむさんの4年先輩ってな話だ。朱子学でいうところの上下定分の理ってやつだな。芸人にとっちゃあ、芸歴ってのは何より大事だ」

 

熊「へぇー、そんな話があるとは知らなかった。そりゃいいね。他にも何かありやすか?」

 

 感心しきりの熊さんに、ご隠居も悪い気がしません。

 

隠「『世田谷区内が住むところ』ってぇのがあるな。

恵は3億円の『ひるおび御殿』を建てたんだが、これが世田谷の成城にあるらしい。

恵には

・1997年生まれの長男・俊太(しゅんた)くん

・2004年生まれの二男・楓徒(ふうと)くん

・2008年生まれの長女・愛結(あゆ)ちゃん

・2012年生まれの三男・暖真(はるま)くん

と四人の子供がいるんだ。恵の子供が通う小学校は成城学園付属校である成城学園初等学校だといわれている」

 

熊「恵のパーソナルデータですかい。こりゃあ縁起がいいですね」

 

隠「『今田耕司の2年下』というのもある」

 

熊「また芸歴ですかい」

 

隠「まあそう言うな。恵の顔を見てみろ。いかにも芸歴に厳しそうなツラじゃねえか。今田耕司さんはわかるだろう?M1の司会だな。芸歴でいうと恵は今田さんの2年後輩なんだ。意外な感じがしねぇか?こうした芸歴の上下を覚えておくと、恵の芸能界での立ち位置がわかりやすくなってくるんだ。子どもの名前に付けときゃ忘れねえだろう?」

 

熊「そいつぁ勉強になりやすね。じゃあ、それも頂きやしょう」

 

隠「こういうのも思い出したな。アタシが子供の頃聞いた話だが、『デブとデブのコンビだったのに恵だけ痩せた』」

 

熊「どういう意味です?」

 

隠「そのままの意味だよ。恵の相方はわかるかい?石塚英彦さんだ。石ちゃんとも言うな。今では石ちゃんはデブキャラ、恵は細いが、昔は恵もデブだったんだ」

 

熊「本当ですかい!?信じられねぇな」

 

隠「うん。元々はそうだったんだが、岸谷五朗さんに貶されるのが嫌だという理由でダイエットした結果20kgも減量したんだ。20年くらい前のことかな。それ以来『痩せている方』になったってなわけよ。石ちゃんは『恵が食べなくなったので、その分自分が食べて余計に太った』なんて言ってるな」

 

熊「なるほどねぇ、こりゃあ恵のエピソードだ」

 

隠「それから『ホンジャマカ』だな。恵の所属するコンビ名だ。コンビといっても、元々は11人体制のグループだったんだが、メンバーが脱退しまくって石ちゃんと恵の2人だけになったんだ。その名前にあやかってみるのも、面白いんじゃないかい」

 

しかし、これには熊さんも渋い顔。

 

熊「……ご隠居さんねぇ、人の子供だと思うからそう言うんだよ。自分の子供にそんな名前付けるかい? ホンジャマカだよ? 学校でいじめられんじゃねぇかなぁ」

 

隠「まぁまぁ、そりゃぁ今思い出したついでの話だ。まだ調べれりゃあいくらも出てくるだろうが、どうするね、調べるかい?」

 

と言うご隠居に、熊さんは手を振って、

 

隠「いや結構、なんてったって今日中に名前を付けてやりてぇ。ただ、覚えきれねぇんでね、ご隠居さん紙に書いちゃ貰えませんか」

 

と、言います。

 ご隠居がそれまでの名前を紙に書いて渡しますと、熊さんは走って行ってしまいました。

 

 名前を書いた紙を貰って家に帰った熊さん。おカミさんと話をするけれど、どれも恵の名前ですから、とても決め切れるものじゃありません。そのうちに考えるのも嫌になり、

「えーいメンドくせー、全部付けちまえ」

てんで、候補に上がった名前をみんな付けちまう。

 恵のご利益なのか、この子は病気一つしないでスクスクと育ちます。

 やがて学校に通うようになると、朝、友達が迎えに来る。

 

友達「恵恵恵の俊彰 海砂利水魚の4年先輩4年先輩4年先輩 世田谷区内が住むところ 今田耕司の2年下 デブとデブのコンビだったのに恵だけ痩せた ホンジャマカホンジャマカホンジャマカの俊彰ちゃん、学校行きましょ」

 

 するとおカミさんが出てきて、

 

おカミさん「あらお早うよっちゃん、迎えに来てくれたのかい? それがウチの、

恵恵恵の俊彰 海砂利水魚の4年先輩4年先輩4年先輩 世田谷区内が住むところ 今田耕司の2年下 デブとデブのコンビだったのに恵だけ痩せた ホンジャマカホンジャマカホンジャマカの俊彰は、まだ寝てんのよ。今起こすからちょっと待ってて頂戴ね。

 ほら、いつまで寝てるの。学校が始まっちゃうじゃないのさ。いつまで寝てるんだいこの子はまったくもう! 恵恵恵の俊彰 海砂利水魚の4年先輩4年先輩4年先輩 世田谷区内が住むところ 今田耕司の2年下 デブとデブのコンビだったのに恵だけ痩せた ホンジャマカホンジャマカホンジャマカの俊彰…」

 

友「おばちゃん、学校始まっちゃうから先に行くねー」

 

なんて事も日常茶飯事。

 そのうちに男の子らしく、ワンパクに育ちましたから、たまにはケンカもします。

 勢い余って、相手の男の子の頭をポカリと殴っちゃって、その子がコブをこしらえて家に言いつけに来る。

 

金坊「うえーーーーん! おばちゃんとこの、恵恵恵の俊彰 海砂利水魚の4年先輩4年先輩4年先輩 世田谷区内が住むところ 今田耕司の2年下 デブとデブのコンビだったのに恵だけ痩せた ホンジャマカホンジャマカホンジャマカの俊彰ちゃんが、アタシの頭ぶって、こんな大きいコブをこしらえたよー!」

 

カ「え、なんだって金ちゃん、ウチの恵恵恵の俊彰 海砂利水魚の4年先輩4年先輩4年先輩 世田谷区内が住むところ 今田耕司の2年下 デブとデブのコンビだったのに恵だけ痩せた ホンジャマカホンジャマカホンジャマカの俊彰が、金ちゃんの頭にコブを作ったって!?そうかいゴメンよ。勘弁してねぇ」

 

と謝ると、おカミさんは熊さんに向かって、

 

カ「ちょっとお前さん聞いたかい? 恵恵恵の俊彰 海砂利水魚の4年先輩4年先輩4年先輩 世田谷区内が住むところ 今田耕司の2年下 デブとデブのコンビだったのに恵だけ痩せた ホンジャマカホンジャマカホンジャマカの俊彰が、金ちゃんの頭にコブを作ったって」

 

熊「何! 恵恵恵の俊彰 海砂利水魚の4年先輩4年先輩4年先輩 世田谷区内が住むところ 今田耕司の4年下」

 

カ「恵は今田さんの2年下」

 

熊「今田耕司の2年下 デブとデブのコンビだったのに恵だけ痩せた ホンジャマカホンジャマカホンジャマカの俊彰が金坊の頭にコブをこしらえた!?

どれ金ちゃん、おじさんに頭ぁ見せてくれ…………って何だい金ちゃん、コブなんかどこにも無ぇじゃねえか」

 

金「あんまり名前が長いから、コブが引っ込んじゃったよ〜〜〜!」

 

めぐみ

かわいいとどうなるの?

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きゃ~~~~~~~♡♡ かわいすぎて食べられなぁ~~~~~~~~い♡♡♡♡♡♡♡

 

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うえひゃ~~~~~~~♡♡ 食べちゃいたいぐらいかわいい~~~~~~~~♡♡♡♡♡♡♡

 

これは僕の脳内にいる、あやこちゃん(16)が実際に発した言葉です。

この二つの発言には決定的な問題点があります。

同一の原因から、相反する二つの結果が導かれているということです。

 

すなわち、

前者では、「かわいい→食べられない」

後者では「かわいい→食べたい」

となっています。

 

これは一見すると矛盾です。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

少なくとも、「かわいい」という要因が、それ単独で食欲に影響を与えているわけではないことは確かです。

「かわいい」という要因が、単独で「食欲増進」あるいは「食欲減退」のどちらかを起こせる力を持っているのであれば、上のような結果にはならないはずです。

 

だとすれば、「かわいさ」が他の要因と結びついて食欲に影響を与えていると考えるのが自然ではないでしょうか。

先の例では、その「他の要因」が異なるため、結果も異なったのです。

では、「他の要因」とは何でしょうか。先の例で、異なっている点はどこなのでしょうか。

 

これは、「かわいいとされている対象」に他ならないでしょう。

前者においては、「食べられるもの(=お菓子)」を、後者においては「食べられないもの(=赤子)」をかわいいと言っています。これこそが「他の要因」です。

 

すなわち、

「食べられるもの」が「かわいい」→食べられない

「食べられないもの」が「かわいい」→食べたい

となるのです。考えてみれば、実に簡単なことです。

 

ここから「かわいさ」が持つ力の正体も明らかになります。

それは“狂気”です。

 

「かわいさ」に触れた人間がどうなったか、思い出してください。

美味しいお菓子を食べられないと言い、赤子を食べようとしていました。

狂っているとしか言いようがありません。

 

お菓子は食べる、赤子は食べない、それが普通です。

しかし、人間を狂わせ、そういった「普通」を覆すのが「かわいさ」なのです。まさに秩序の破壊者です

 

「かわいさ」は人間を狂わせ、秩序を破壊し、社会を崩壊に導くのです。

このことが明らかになった今、「かわいいは作れる」という有名なキャッチコピーが、テロ集団の蜂起の合図であったことがわかります。

かわいさによって社会秩序を破壊しようとする集団が、確かに存在するのです。そして、各地に散らばるその構成員への合図が、このキャッチコピーなのではないでしょうか。構成員の各々が「かわいい」を作って人々を狂気に陥れるよう指示しているのです。 

 

世界は、すでに「かわいさ」に蝕まれ、かわいく崩壊する途上にあるのです。かわいいカタストロフが、我々の眼前に迫っているのです。

 

そうして世界が終わるのならば、そこで自分の命も潰えるのならば、せめてその走馬灯に映るのは、かわいい女子高生であることを願うばかりです。

万引きの相殺

当たり付きのアイスってありますよね。

 

こういうやつです。

この当たりを“確実に引ける能力”があったら、素敵ですよね。

もしそんな能力があったらやってみたいことがあるのです。

 

夏の足音が聞こえる最近の気候。夏といえばアイス、アイスといえば万引きですよね。

しかし、残念ながら万引きは犯罪です。

決して許される行為ではありません。

でも、 ”アイスの当たりを確実に引ける能力”があったらどうでしょう?

 

例えば、この能力を持ったあなたが、万引きするとしましょう。

暑くなってきましたから、万引くなら、やはりアイスです。

しかし、店員さんに捕まってしまいます。こういうこともあるでしょう。

そして、店員さんとともに事務所に向かうことになります。

このとき、万引いたアイスも一緒に持っていくものと推測されます。なぜなら、そのアイスは万引きの重要な証拠であり、アイスケースに戻す事は考えにくいからです。

 

事務所では厳しい説教が展開されることでしょう。

正論のナイフが心を刺します。

そんなとき、ふと目に入るのは、先ほど万引きしたアイスです。

常温では確実に溶けていきます。パッケージには無数の水滴がつき、やがてアイスとしての形が崩れてきます。

製菓会社の方々が丹精込めて作ったアイスが、誰の口にも運ばれぬまま、液体に帰す。そんなことがあって良いのでしょうか。窃盗に加えて、製菓会社の方々の気持ちを踏みにじるという罪を重ねても良いのでしょうか。

 

そうなれば、取るべき行動は一つです。

 

アイスを、食べるのです。

袋を開け、アイスを口に運ぶのです。溶けかかったアイスは、口内にすぐに消えゆくことでしょう。尋問を担当していた店員さんはすぐさま制止にかかります。

そのとき、口から抜かれたアイスの棒には何と書かれていますか?

 

思い出してください、あなたの能力を。

 

“当たり”です。

 

確実に当たりを引けるのです。

つまり“代金を払わず、アイスを一本もらえる権利”がこの瞬間得られるわけです。

 

ここで、あなたの罪を思い返してみてください。

“代金を払わず、アイスを一本もらったこと”です。

 

ここに万引きの相殺が成立します。

つまり、“代金を払わず、アイスを一本もらえる権利”をもって、“代金を払わず、アイスを一本もらったこと”を相殺できるのです。

あなたは当たり棒を持っていますから、アイスをタダでもらう正当な権利者です。もらうのが少し早かっただけのことなのです。

正しいのはあなたです。

 

これで“勝ち”です。

たとえその後、前科が増えようと、実刑を受けようと、このロジックによってあなたの“勝ち”は揺るがないのです。

 

もしこの能力を持っている方がいれば、“勝って”みてはいかがでしょうか。

それでは。

東西

僕は大阪の人間です。ずっと西で生きています。

あれは中学二年のときです。僕のクラスに東京から転校生がやってきました。

僕の中学は大阪の汚い公立でしたので、東京からの転校生というコンテンツに大騒ぎです。その転校生がイケメンだったことが、喧噪に拍車をかけていました。

 

一方で、当時の僕の心には東京人に対する敵対意識が確かに存在していました。

関西にお住まいの方は理解していたただけるかと思いますが、関西のローカル番組は、関西、とりわけ大阪のプロパガンダを熱心に放送しています。それは東京に対するネガキャンと常にセットのものでした。

関東の人間は冷たい

関西の人間は暖かい

メディアの影響力は大きく、当時の僕に歪な郷土愛を与えました。

 

その転校生は、しかし、僕の東京に対する偏見を払拭する程に“いいやつ”でした。僕が関西人の特権だと信じて疑わなかった“人間的暖かさ”を充分すぎるほど持っていたのです。

いつしか僕らの関係は親友と呼べるものになっていきます。僕は彼のことを親しみを込めて「しんちゃん」と呼ぶようになりました。

 

三年生になり、僕としんちゃんは当たり前のように同じクラスになりました。そして、修学旅行という大イベントがやってきます。

あれは確か修学旅行最終日だったと思います。僕らのグループはうどん屋に昼食をとりに行きました。

そのうどん屋は、いわゆる“天かす入れ放題”のお店で、「ちょっとデカすぎるんじゃないの」という天かすの容器がカウンターに置かれていました。飢えた男子中学生の僕らは狂ったようにうどんに天かすを入れます。やがて、出汁の水面が見えなくなりました。

しかし、しんちゃんのうどんだけは、水面がきれいなままです。

僕は店のルールをわかっていないのではないかと思い、

「天かす、入れへんの」

と訊きました。

しんちゃんは不思議そうな顔をするばかりです。今度は少し強めの口調で、件のデカい天かす入れを指さしながら

「天かす!入れへんの?タダやで」

と言いました。

 すると、しんちゃんは合点がいった様子で

 

「ああ!これ天かすって呼ぶの?俺は“あげだま”っていうけどなー」

 

と答えたのです。

そこには何の意図もなかったと思います。彼は事実を述べただけだったのでしょう。

ただ、その言葉は、僕に大きすぎる打撃を与えました。

 

しんちゃんと僕らが仲良くなった理由として、東京という異文化に触れるのが面白かったということがあります。彼は、東京じぶんを卑下することなく、また大阪ぼくらを見下して居丈高になることもなく、両者の差異を面白く話してくれました。

そのことが、関西は関東より優れているという僕の誤った認識を矯正してくれたのです。東西に優劣はない、と。

 

しかし、天かす/あげだまの差異は、東西の文化的優劣を、残酷なまでに表していました。

かたや、曲がりなりにも食品であるものに「カス」と名をつけ、その「カス」を元の料理の味がわからなくなるほど大量に入れる大阪ぼくらと、「あげだま」という上品な中にもどこかかわいらしさのある呼び名を使い、無料といえどもそれを貪るようなことはしない東京かれら。どうしてここに優劣がないといえるでしょう。

みんなは笑っていました。それは、僕らの仲良しグループで幾度も見た光景――東西の差をネタにした談笑でした。けれどもその時僕は、“負け”を悟ったのです。

本当は、わかっていたのです。東京は首都で大阪は首都ではなく、東大は京大よりも偏差値が高く、ディズニーはユニバよりも来場者が多いのです。だけど、認めたくなかったのです。

そういう東に対するルサンチマンが、“あげだま”を機に燃え上がり、同時に灰となったのです。

 

今になって考えると、「僕」対「しんちゃん」の差異を「西」対「東」の優劣に拡大解釈しただけなのかもしれません。しんちゃんに対して抱いた劣等感を大阪に押し付けただけなのかもしれません。

地域間に絶対的な優劣は存在しないし、それを論ずること自体が無益であるという正論も今ではよく脳になじみます。

 

ただ、 当時の僕の心が、15歳の僕の自意識が、東の文化に蹂躙されたことを、時々、思い出すのです。

料理の「さしすせそ」

こんにちは!ご覧いただきありがとうございます!

初めての投稿です!至らぬ点もあるかと思いますが、これからよろしくお願いします。


せっかくこうしてブログを見ていたただいている訳ですから、少しでも読者の方にとって身になる情報をお届けできればと思っています。


そこで!


今日は料理の「さしすせそ」。これについてお話ししたいと思います。


和食においては、サ行、すなわち「さしすせそ」これが頭文字に来る調味料が非常に重要になってくるんですね。「さしすせそ」は和食の味付けをするときに入れる調味料の順番を覚えるための語呂合わせなのです!

 

それでは、「さしすせそ」が具体的に何を指すのか、詳しく説明していきたいと思います。

 

さ、堺正章のモノマネが特技だった。その日、会社の飲み会で一発芸を強要された僕は「さらば恋人を歌う堺正章」を披露した。同僚からの「並の似だね」の声。翌日午前四時に出社した僕は、誰もいないオフィス、上司の机にさよならと書いた手紙を置いて空港へ向かった。北海道行きの飛行機に飛び乗る。逃げるなら北、というイメージがあった。

し、知らない土地への逃避行。着信が積もるスマートフォンは新千歳のゴミ箱に捨てた。身寄りのない僕は知り合った女の家に転がり込んだ。女の名前は知らない。同じように彼女も僕の名前を知らないだろう。ただ、薄汚れたアパートの一室に二人の生活がある、それだけが事実だった。

す、数ヶ月が経っただろうか。女の背にひどいひび割れを見つけた。あまりにも痛々しい。ひび割れにそっと触れると、女の背は二つに裂け、中から堺正章。それと同時に扉は壊れ、窓は割れ、壁は崩れ、あらゆる場所から会社の上司と同僚が侵入してくる。

せ、盛大な祝い。「おめでとう!」「おめでとう!」「感動をありがとう!」社員達の賛辞が聞こえる。「仲間の絆に星三つです!!!」と堺。それが僕の尊厳を蹂躙した。夕暮れの林地。気づくと雪が降っていた。先ほど死体を埋め終えた地面が薄く白い。東京へ帰ろうと思った。

そ、味噌。